ことばのまえ Sou NAKAYAMA

Sou NAKAYAMA

  • ある一日

    2013.03.07

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    さらさらとした光がさす朝だった

    駅までの坂道を下っていると
    小綺麗な格好をした女性が
    坂の下からこちらに向かって手を振っていた

    女性に近づくにつれその手の振り方は
    だんだんと大胆な程に大きく揺れていた

    知り合いなのだろうかと思いを巡らせていると
    女性の側に黄色いタクシーが止まり
    そのまま去っていった

     

    手を振り返さなくてよいときもある

     

    さらさらとした光が拡がる昼だった

    街を歩く人が通勤鞄のように右手に
    如雨露を持ってすれ違っては
    僕を追い抜いていった

    各ご家庭の軒下に置いてある花や
    無造作に道に生い茂っている植物に
    それぞれの如雨露でそれぞれの水を注いでいた

    老若男女問わず色とりどりの如雨露を持って
    各ご家庭の軒下に置いてある花や
    無造作に道に生い茂っている植物に
    それぞれの水を注いでいた

     

    愛情の注ぎ方は人それぞれだ

     

    さらさらとした光が滲む夜だった

    一日の労働が終わり川岸に出てみると
    川に向かって叫んでいる男性が居た

    思いのほか川は海よりも広くないため
    向こう岸にあるビルに叫び声が跳ね返って
    その男性にすべて返ってきた

     

    すべての行いや言葉は自分に還ってくる

     

     

    「さらさらとした光が照らしたものについて」