ことばのまえ Sou NAKAYAMA

Sou NAKAYAMA

  • 「雨」

    2012.07.23

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    雨に濡れて街灯が反射する道を遠回りして帰ってきた
    霧雨になったり雨粒が落ちる速度がまばらな
    ここ2日間の雨は生きているようでどこか落ち着いた

    失うことから得ることについて考えている
    得ることから失うことについて考えている

    でも失うも得るも何もないのかもしれない
    所有という概念はすべて幻想のようなものなのかもしれない

    ただ反射的に何かを失ったときはトンネルの先にちいさく光る
    希望のような出口を探したりもする

    出口に辿り着き日常が始まり景色に見慣れ飽和状態になると
    自分が歩んでいる道を疑ってしまうこともある

    そういうときは眠るのが一番なのかもしれない

     

  • 「録音」

    2012.07.09

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    今朝平日よりも空いている地下鉄の車内で
    スペイン語かポルトガル語で話す観光客と
    思われる家族と長細い椅子で隣り合った

    僕にとって見慣れた一駅一駅も
    遠いところから来た彼らにとっては
    驚きと楽しさの連続でその雰囲気が
    無機質な空間を少しだけ明るくさせてくれていた

    昨年会社を休職しているときに
    広尾図書館に通っている時期があった

    ちょうど夏を迎える時期から秋の終わりまで
    朝から夜まで本を読んだり
    何かをメモしたり目の前の有栖川公園で
    緑を眺めていたりしていた

    会社に向かう途中不意な誤作動で
    I phoneから蝉の鳴き声や子どもたちが遊ぶ声や
    カラスが鳴いている音が流れはじめた

    昨年何気なく録音した有栖川公園の音だった
    60秒ほどの世界は一瞬にそのときの
    空気や感情を蘇らせてくれた

    今朝の地下鉄の車内の音も録音したくなったけれど
    気がついたらもう降りる駅だった

     

  • 「できれば」

    2012.07.06

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    できれば遠くへ行きたいと思った
    帰り道の夜空には雲が疎らで
    いつものように風が通り過ぎる

    2つ哀しみに触れた
    3つ矛盾を受け容れた

    そんな日の帰り道の足取りはどこか重くて
    できれば
    遠くへ行きたいと思った